『こんな恋のはなし』が再放送できない理由とは？権利とコストの壁を徹底解説

かつて多くの視聴者の心をつかんだ名作ドラマ『こんな恋のはなし』。しかし現在、地上波・BS・配信サービスなど、あらゆるプラットフォームで再放送されていないことに、疑問や不満を感じている方も多いのではないでしょうか？

この記事では、なぜ『こんな恋のはなし』だけが再配信されないのか、その背景にある「大人の事情」を徹底解説。視聴者の声、1997年当時の制作環境、権利関係の複雑さ、そして配信が不可能とされる真の理由に迫ります。

『こんな恋のはなし』が再放送できない理由と現在の状況

視聴者の再放送・配信要求と現状のサービス提供

『こんな恋のはなし』は、1997年のフジテレビ「木曜劇場」で放送され、主演・玉置浩二さんによる「余命3ヶ月の貧乏画家」という切ない設定が話題を呼びました。

今でも多くのファンから「もう一度観たい」という声が上がっているにも関わらず、現在、地上波・CS・VOD・DVDを含めて、どこでも視聴することができません。

なぜこの名作だけが再放送されないのか？ その疑問こそが、この記事の出発点です。

1997年当時の契約構造と「見られない」理由の始まり

当時は、「テレビ放送専用契約」が一般的であり、VODや配信など、現在のような視聴形態は想定されていませんでした。

脚本家、音楽家、主演俳優など、あらゆる関係者との契約が「配信」に対応しておらず、現在の再利用に向けた再許諾が必要となっています。

その中でも特に、主演の玉置浩二さんの肖像権や音楽の著作権がネックとなり、「見たいのに見られない」状態が続いているのです。

『こんな恋のはなし』再配信を阻む三つの大きな壁とは？

第一の壁：主演俳優の肖像権と高額な再許諾コスト

玉置浩二さんの肖像権が再配信最大のハードルとされています。

日本の芸能界では、タレントの「顔」や「イメージ」の利用権が厳しく管理されており、テレビ放送当時と異なり、配信での再利用には事務所との再交渉が必要です。

特にアーティスト活動も行っている玉置さんは、そのブランドイメージを守るため、再利用料が非常に高額になる傾向があります。

仮に1人の再許諾が得られないだけで、配信プロジェクトが頓挫する可能性があるため、この壁は最も致命的といわれています。

第二の壁：音楽著作権と「サブマリン著作権危機」

主題歌やBGMの使用には、作曲家・演奏者・レコード会社など複数の権利者の許諾が必要です。

特に厄介なのが、誰が権利を持っているか不明なBGMの存在。これが「サブマリン著作権」と呼ばれる問題です。

1990年代当時、配信の概念がなかったため、テレビ用の契約しかされておらず、再配信には新たな契約が必要です。

このようなBGMの再許諾作業は時間もコストもかかり、特定できない場合は、配信自体ができなくなるリスクもあります。

第三の壁：その他の著作権と映像の技術的問題

脚本家との交渉、美術品やポスターの映り込みに対する許諾、ロゴや商品名のマスキング処理など、多数の知的財産が絡む点も課題です。

さらに、マスターテープの劣化や、HD化に必要なレストレーション費用も無視できません。

これらをすべてクリアするには、法的・技術的・経済的なハードルを同時に超えなければならないという現実があります。

再放送できない決定打はコスト？『こんな恋のはなし』の採算問題

クリアランス費用と期待収益のギャップ

『こんな恋のはなし』が配信されない最大の理由は、経済的な非合理性です。

関係者の再許諾や技術的処理にかかるクリアランス費用は、推定2,500万〜6,500万円とも言われています。

一方で、VODにおける旧作（カタログ作品）の年間収益は、500〜1,000万円程度。
つまり、コストが期待収益を大きく上回る構造となっています。

名作であっても、採算が合わなければ事業化は困難。これが「大人の事情」の本質です。

特に高額な障壁：主演と音楽の権利

玉置浩二さんの肖像権・再許諾料だけでも、1,000〜3,000万円と推定されており、全体コストの中でも突出した割合を占めます。

主題歌・BGMなどの音楽使用料も、原盤権・同期権など多岐にわたり、追加で数百万円規模が発生します。

こうした障壁が重なり、「見たい人は多いが、儲からない」という商業的ジレンマに直面しているのが現状です。

結果的に、再配信は「法的に不可能」ではなく、「経済的に実行できない」という結論に至ります。

『こんな恋のはなし』がもう一度見られる日は来る？再放送への提言

なぜ「再放送できない」のかを明確化する

『こんな恋のはなし』が再放送・配信されない理由は、スキャンダルや意図的な封印ではなく、あくまで「契約・経済の問題」です。

特定の誰かが再放送を妨害しているのではなく、権利が複雑に絡み合い、コストがかかりすぎる構造が大きな要因となっています。

つまり、問題の本質は「仕組み」であり、悪意や不祥事ではないのです。

再配信に向けた現実的なアプローチ

この状況を打破するには、新たなビジネスモデルの導入が鍵となります。

例えば、1話ずつ課金するプレミアムVOD（PVOD）方式や、限定チャンネルでの放送など、柔軟な展開が有望視されています。

視聴者の「本当に観たい！」という気持ちを収益に変える工夫ができれば、再配信の扉は開くかもしれません。

レガシーコンテンツを未来へつなぐには

『こんな恋のはなし』は、今でも色褪せない珠玉の純愛ドラマです。

私たちが愛する作品を未来へ残すには、「観たい」という声を上げ続けることが重要です。

そして、権利者やプラットフォーム側も、新しい合意の形を模索する時代に入っています。
願いは届く——そんな希望を持って、今は見守りましょう。