実話と映画『凶悪』の対比:驚愕の真実と映画化の工夫、ネタバレあり

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映画『凶悪』は、実際に起きた恐ろしい事件「上申書殺人事件」を元に制作された作品です。本作は観る者に深い衝撃を与えるだけでなく、人間の深層心理や社会の闇を描き出し、多くの議論を呼びました。一方で、この映画が実際の事件とどのように違うのか、どのように映画化されたのかについてはあまり知られていません。そこで本記事では、映画『凶悪』とその題材となった「上申書殺人事件」の比較を行い、映画化の工夫や創造性について考察します。

もくじ

映画『凶悪』の概要

項目内容
公開年2013年
監督白石和彌
原作ノンフィクション『凶悪 -ある死刑囚の告発-』
脚本白石和彌、吉田恵輔
出演山田孝之、ピエール瀧、リリー・フランキー、池脇千鶴
ストーリー死刑囚の須藤(ピエール瀧)が、獄中から自身の余罪として3件の殺人事件を告発。雑誌記者の藤井(山田孝之)は、須藤の証言を裏付けるために調査を始める。
テーマ凶悪な犯罪の真相、死刑制度、メディアの責任
特徴衝撃的な内容、リアルな描写、社会派サスペンス

映画『凶悪』は2013年に公開された邦画で、白石和彌監督の初の長編作品です。主演は山田孝之、共演にはピエール瀧、リリー・フランキーなどが名を連ねています。この映画は、元暴力団組員の死刑囚が自身が関与した複数の事件を告発した実話を基に制作されました。

映画『凶悪』のストーリー

あらすじ
  • 雑誌記者の藤井(山田孝之)は、死刑囚の須藤(ピエール瀧)から、自身の余罪として3件の殺人事件を告発される。
  • 藤井は、須藤の証言を裏付けるために調査を始める。
  • 調査を進める中で、藤井は元暴力団組長の須藤(リリー・フランキー)と出会い、事件の真相に迫っていく。
  • 事件は、想像を絶する凶悪な内容だった。
  • 藤井は、真実を伝えるべきか、正義のために何をすべきか葛藤する。

映画『凶悪』の主人公は、雑誌記者の藤井修一(山田孝之)。彼の元に、死刑囚となった元暴力団組員須藤純二(ピエール瀧)から手紙が届きます。手紙の内容は、須藤が関与した他の殺人事件と、それらの共犯者についての告発でした。

須藤が告発した共犯者、通称「先生」こと木村孝雄(リリー・フランキー)は、不動産ブローカーとして須藤を利用し、3つの殺人事件を企てたとされています。しかし、これらの事件は須藤が告発するまで、警察の目を逃れていました。

藤井はこの手紙をもとに取材を開始しますが、その過程で彼は次第に事件の深淵へと引きずり込まれていきます。

映画『凶悪』の原作

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映画『凶悪』の原作は、ノンフィクション書籍『凶悪 -ある死刑囚の告発-』です。

内容

  • 実際に起きた凶悪な殺人事件を基に、死刑囚の告発と雑誌記者の調査を描いたノンフィクション
  • 事件の真相に迫るだけでなく、死刑制度やメディアの責任など、様々な問題を問いかけている
  • 2012年に文庫化

映画との違い

  • 映画は、原作を基にしていますが、フィクションも含まれています。
  • 映画では、雑誌記者の藤井は主人公として描かれていますが、原作では脇役として登場します。
  • 映画では、凶悪な犯罪の真相に迫るだけでなく、死刑制度やメディアの責任など、様々な問題を問いかけています。

上申書殺人事件とは?

石岡市焼却事件

1999年11月中旬にXが金銭トラブルを巡ってネクタイで男性の首を絞めて殺害し、茨城県石岡市のとある会社まで運び、敷地内の焼却場で、Xが新聞紙を丸めて火を付け廃材と一緒に焼いた。被害男性は推定60歳代だが名字しかわからなかった。遺体が焼かれて残っていないだけでなく、身元確認も困難な状況となった。この事件でXは億単位の金を入手した。

北茨城市生き埋め事件

1999年11月下旬にXが埼玉県大宮市(現さいたま市)の資産家男性(当時70代)を水戸市の駐車場で拉致して北茨城市のXの所有地まで運んで穴を掘り、穴の中に入れて生き埋めにして殺害した。男性の土地はX名義にされたのちに売却された。被害男性は特定されており、男性の住民票移動や土地登記の移動も上申書の通り裏付けられた。しかし、X所有の土地で遺体が見つからなかった(Xが証拠隠滅のために、遺体を掘り起こして別の土地に移したという情報がある)。被害男性は身寄りがなく、DNA鑑定しても本人確認は困難であった。この事件でXは約7000万円を入手した。

日立市ウォッカ事件

Xは、2000年7月中旬から借金を抱えていた茨城県阿見町のカーテン店経営者(当時67歳)を日立市内の事務所等で軟禁状態に置き、糖尿病と肝硬変を患っていた被害者の体調悪化を狙い1か月の間に大量の酒を与え、2000年8月中旬にXの自宅で高アルコール濃度のウォッカを無理やり飲ませて病死に見せかけて殺害し、遺体を七会村(現城里町)下赤沢の山中の林道に運んで遺棄した事件である。8月15日に遺体が発見された。当初は警察が「事件性無し」として処理した結果、残された家族は生保会社2社から約1億円の生命保険金を手にしたが、大部分の保険金はXたちによって山分けされた。

Wikipediaより引用

映画『凶悪』と「上申書殺人事件」の比較

映画『凶悪』は、実際の「上申書殺人事件」を基にしていますが、映画化の過程でいくつかの変更や追加がなされています。以下にその主な点を紹介します。

木村孝雄(先生)の描写

映画では、先生こと木村孝雄(リリー・フランキー)は冷酷な犯罪者として描かれていますが、実際の事件では、彼は須藤から「先生」と慕われる存在でした。映画では、この「先生」の存在が須藤の行動の動機となっています。

藤井修一(山田孝之)の役割

映画では、藤井修一(山田孝之)は雑誌記者として描かれ、事件の真相を追っていきます。しかし、実際の事件では、藤井のような役割を担ったのは新潮45の記者でした。映画では、この記者の役割を藤井というキャラクターに一本化し、視覚的に事件を追体験する視点を提供しています。

事件の再現

映画では、須藤が告発した3つの事件が詳細に再現されています。これらのシーンは、映画の中で最も衝撃的な部分であり、観客に強烈な印象を与えます。しかし、これらの再現シーンは、実際の事件の詳細を基にしているものの、一部は創作や推測に基づいています。

上申書殺人事件のその後

上申書殺人事件のその後、首謀者であるXは無期懲役、Gは懲役20年(宇都宮市の事件で死刑確定)となっている

告発されていた3つの殺人事件の内、日立市ウォッカ事件が保険金殺人として刑事裁判となった。

裁判の結果、首謀者であるXは無期懲役、死亡現場に立ち会いXと殺人の共謀をしていたGは懲役20年(宇都宮市の事件で死刑確定)

従犯だった舎弟4人は不起訴(生存した3人は別事件で12年 – 無期の懲役)

保険金殺人の依頼をした死亡者家族3人に懲役13 – 15年が言い渡された。

死亡保険金が振り込まれた口座を不正開設した詐欺罪で死亡者家族2人が懲役1年・執行猶予3年となった。

事件捜査中の2006年12月31日に、殺人事件の依頼を仲介したとされる工務店経営者(当時52歳)が交通事故死している。

Wikipediaより引用

映画『凶悪』の評価と影響

映画『凶悪』は、そのリアルな描写と衝撃的なストーリーで観客を魅了しました。また、実際の事件を題材にしていることで、観客に事件への興味や理解を深めるきっかけを提供しました。

しかし、映画は実際の事件をドラマティックに描き出すための手段であり、必ずしも全ての事実を正確に反映しているわけではありません。映画『凶悪』も、実際の事件とはいくつかの違いがあります。それでも、この映画は事件の本質を捉え、観客に深い衝撃と共感を与えることに成功しました。

また、映画は「上申書殺人事件」を通じて、人間の欲望や罪、そして社会の闇について問いかけています。これらのテーマは、観客に自身の価値観や社会への見方を再考するきっかけを与え、深い議論を生むこととなりました。

まとめ:映画『凶悪』と「上申書殺人事件」

映画『凶悪』は、実際に起きた「上申書殺人事件」を基にした作品ですが、映画化の過程でいくつかの変更や追加がなされ、実際の事件とは異なる部分もあります。それでも、この映画は事件の本質を捉え、観客に深い衝撃と共感を与えることに成功しました。また、映画は事件を通じて、人間の欲望や罪、そして社会の闇について問いかけ、深い議論を生むこととなりました。

映画『凶悪』の強烈な描写とストーリーは、観る者に衝撃を与え、多くの議論を呼びます。それは、映画が実際の事件を基にしながらも、その事件を映画ならではの方法で再現・再解釈し、観客に新たな視点を提供することによるものです。そして、それは映画『凶悪』が、単なる実話の再現ではなく、人間の心理や社会の闇を描き出す作品であることを示しています。

本記事では、映画『凶悪』とその題材となった「上申書殺人事件」の比較を行い、映画化の工夫や創造性について考察しました。映画と実話の間には、必ずしも一致しない部分もありますが、それは映画が実話を基にしながらも、独自の解釈や表現を加え、より深いメッセージを伝えるためのものです。そして、それこそが映画『凶悪』の真の価値と言えるでしょう。

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